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旧イリアイ町界隈には『たまりみず』という名のサビ崩れたカフェがあります。そこでは、退屈に閉じ込められた他愛の無い、やっぱり退屈なお話がたっぷり詰まっています。そんなお話たちの一片をごらんになれる地球で唯一の場所。。

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路地裏メルヘン倶楽部 

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十数年ほど前、つまり学生時代に同人誌上で発表した小説に『路地裏メルヘン倶楽部』というものがある。

路地裏を縫って進むと古びたビルディングに出くわし、壊れたネオンがチカチカと灯る階段を下ると秘密の倶楽部があった。

そこでは仮想世界とも現実世界とも判然としないヘルヘンな世界を自由に探索できる。

ニッポンのおとぎ話『カチカチ山』より材を得て、主人公は『カチカチ山』の世界を探索する。

ところがお話は、おばあさんを殺された仇を討つはずの白うさぎが逆に狸に殺されてしまうという展開に変わっている。

この現実を目の当たりにした主人公は、よしそれじゃあ自分が代わって仇を討つと志願し、倶楽部のナビゲーターより拳銃を受け取る。

ナイフを持って襲い掛かってくる狸に拳銃を発砲するも、空砲だった。

丸腰になった主人公は、一体どうする?

というお話。

正義とは何か?いざ丸腰になったとき、人間は本当に正義でいられるのか?という世の中の綺麗事に対するボクなりのアンチテーゼを表現したわけなのだが、さすがに若かったんだなあ。

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当時から、人がやっとすれ違える程度の路地裏を見つけると、なんだかわくわくして、ついつい奥へ奥へと歩いてゆく癖があった。

なぜボクが路地裏に取り付かれたのかというと、実は一言で片付いてしまう。

ボクは『未知』を求めている。

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路地裏に迷い込む。

そのうち方向感覚がすっかり機能しなくなって、自分は一体どこを歩いているのか、自宅からさほど離れていないはずなのに、途方も無い遠方へ来てしまったような錯覚にまどろんでゆく。

何もかもわからなくて、自分は迷子で、この先どうなってしまうのか検討もつかなくて、ただ歩くしかなくて、ビクビクしながら辺りの景色をじっくり観察して、でもそれが心地よくて、人間の匂いがたっぷり沁み込んだ路地裏を、ボクは愛している。

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人がやっとすれ違うことのできる路地裏に、ひょっこりお店に出くわすことがある。

一日に多くても数十人ほどしか通らないだろう小道に、手芸屋や理容店、時にはカフェがあったりもする。

儲けを一切度外視して自宅を改装した自己満足のお店なのか、趣味で営業しているお店というのは、どこも一癖も二癖もあって味わい深い。

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洗濯水の匂いが漂ってくる。

線香の匂いが流れてくる。

猫がひなたで欠伸をしている。

おばあちゃんが杖をついて歩いている。

歌謡曲が聞こえてくる。

狭い路地裏にも光が届いている。
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2007/04/25 01:44|PHOTOTB:0CM:0

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プロフィール

ろんど

Author:ろんど
高校時代に伝説のパンクバンド『Felicitous Dog』のメインボーカルとして活躍。ライブ活動多数。「今夜はオレのためにありがとう」などのMCで一躍脚光を浴び大スターの座に躍り出た。高校3年の学祭ではトリを務め、全校生徒を完全に魅了した。バンドは高校卒業時解散。
その後デュオ『Power of myth』のメインボーカルとして再び音楽活動に入る。神話的イメージとタンゴ調POPSの融合を試み新しい音楽の創造に尽力、友人、知人、他人、周辺住民の間で一世を風靡した。活動期間わずか4年で解散。
一方、大学在籍一年時に非公認サークル『創作文藝会』を有志4人らとともに創設。初代~3期の会長に就任。文芸同人誌 『ん!?』の編集長として創刊号から第9号まで手がける。
自身も小説、ポエム、エッセイ、旅行記など幅広く投稿し作家としての一面も合わせ持った。淡い青春時代の虚栄心を克明に描いた処女作『はげ』で衝撃のデビュー。『正常な狂人』『路地裏メルヘン倶楽部』『テープスペクタクル』『シルエット』『おやっさんの体験談』『山田X』『光芒の黒』『循環』など次々とヒット作を連発し、ファンタジックな世界観をやさしく流麗な文体で表現した悲喜劇が主に女性読者層のファンを集めた。また自身の旅行記を著した『中国おったまげ探訪記』『インド・ネパールぶったまげ放浪記』などアクティヴ派作家としての一面も持ち、抱腹絶倒で痛快な文体は学生諸君に夢と希望を与えた。詩人としては、銀色夏生をもじったペンネーム 金色なめを で純情恋愛ポエムを次々と発表。学内の話題を総なめにした。他、読書案内の『ろんどのやけっぱち書房』シリーズ、映画紹介の『寝巻きでシネマ館』シリーズなどがある。
第3期目には非公認サークルから大学公認クラブへと昇格させ、大学から予算がおりるようになるやいなや、連日連夜に渡って放蕩の限りを尽くした。
学生時代はインド、ネパール、インドネシア、中国、西欧諸国等海外放浪をライフワークとした。おかげで日本社会に馴染みきれないもどかしさがある。

現在はしがない会社員。一児の父。趣味は散歩と昼寝の他、特にない。座右の銘は『私が自画自賛しなければ一体誰がしてくれよう』である。

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