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旧イリアイ町界隈には『たまりみず』という名のサビ崩れたカフェがあります。そこでは、退屈に閉じ込められた他愛の無い、やっぱり退屈なお話がたっぷり詰まっています。そんなお話たちの一片をごらんになれる地球で唯一の場所。。

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病院へいこう 

と、タイトルで意気込んだものの、ボクは病院が大嫌いだ。

わざわざ休みの日を潰して通うこと自体、時間の無駄だと思われるし、とにかく待つことがどうしようも無く嫌いなボクは待合室で老人や子供らと並んで30分ほど待たされようものなら、思わず貧乏ゆすりでもしたくなるほど精神に過重に負担がかかる。

多少の体の不調は自覚しつつも、結局のところ放置してしまう。

こうして体のあちこちが病気だらけとなる。

歯。

これに関しても、軟弱なボクに似合わず歯痛の苦痛に耐え続け、なんとか凌いできたが、とうとう我慢の限界がやってきた。

歯が痛いを通り越して、もはや頭痛がする。

実は数年前、やはり歯痛に我慢ができず歯医者に行った際、レントゲンを撮った経緯があるのだが、写真を見せられて絶句した。

奥歯の歯茎から、かなり奥まったところに親知らずを発見したのだ。

こいつを取り除くためには、シロウト目に見ても、あるいはかなり楽観的に想像してみても、メスを使った大掛かりな手術になることは明らかだった。

その際は、痛み止めを飲んで窮場を凌ぎ、以降なるだけ忘れようと努めてきた。

忘れようと努めてきてはいるが、体はなかなか忘れてはくれないようで、体調を崩した折に、思い出したように痛み始めた。


ボクが引っ越した早々、まず向かったのは、近くの歯医者である。

ほっぺを押さえながら、渋々歯科医院の受付へ行った。

「本日のご予約は?」

「初めてです」

「今日、どうされました?」と受付嬢。

「たぶん、虫歯かな」

「こちらに記入をお願いします」と問診表。

そういえば新住所、電話番号をまだ暗記していなかったことに気づいた。

「住所、わからないんです」

「電話番号は?」

「それもわかりません。テキトーでかまいませんか?」

「それは困ります」

と当然の返答があった。

「困ったな、歯が痛いんです」

と訳のわからないことを口走るほど、切羽詰まっていたのかもしれない。

「ご家族の方に連絡するとか」

「そうですね、そうしてみます」

と携帯を取り出すと、

「院内でのご使用はご遠慮願います」

と叱られてしまった。

まったく、世の中面倒臭いことだらけだ。


その後、1時間程度待たされて、ようやく診てもらって、再び驚愕の事実を知ることになった。

親知らずの痛みは治まったものの、歯医者がAだのBだのとボクの歯を一本ずつチェックするものだから、帰りがけに訊ねてみた。

これでもボクは歯磨きの入念さにかけては、ちょっとした自信がある。

歯ブラシは1ヶ月以内には必ず1本潰してしまうため、よく妻からは磨き過ぎとのクレームが入るほどだ。

歯の裏側の隅々まできっちり磨くことを常としている。

そのボクが、まさか虫歯などあろうはずが無い。

自信満々でこう訊ねたのだ。

「虫歯なんて一本もありませんよね」

歯医者はマスクの下から、クスリと鼻で笑い、カルテを見ながらこう答えた。

「右側に6本。左側に6本あります」

「ウソでしょ?本気ですか?」

「事実です」


かくして、週に2回は歯医者に通院している。

12本の歯が完治するまでには、あとどれくらい通院する必要があるのか。

考えただけでも立ちくらみしてしまう。
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2008/03/07 01:26|My だいありーTB:0CM:0

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プロフィール

ろんど

Author:ろんど
高校時代に伝説のパンクバンド『Felicitous Dog』のメインボーカルとして活躍。ライブ活動多数。「今夜はオレのためにありがとう」などのMCで一躍脚光を浴び大スターの座に躍り出た。高校3年の学祭ではトリを務め、全校生徒を完全に魅了した。バンドは高校卒業時解散。
その後デュオ『Power of myth』のメインボーカルとして再び音楽活動に入る。神話的イメージとタンゴ調POPSの融合を試み新しい音楽の創造に尽力、友人、知人、他人、周辺住民の間で一世を風靡した。活動期間わずか4年で解散。
一方、大学在籍一年時に非公認サークル『創作文藝会』を有志4人らとともに創設。初代~3期の会長に就任。文芸同人誌 『ん!?』の編集長として創刊号から第9号まで手がける。
自身も小説、ポエム、エッセイ、旅行記など幅広く投稿し作家としての一面も合わせ持った。淡い青春時代の虚栄心を克明に描いた処女作『はげ』で衝撃のデビュー。『正常な狂人』『路地裏メルヘン倶楽部』『テープスペクタクル』『シルエット』『おやっさんの体験談』『山田X』『光芒の黒』『循環』など次々とヒット作を連発し、ファンタジックな世界観をやさしく流麗な文体で表現した悲喜劇が主に女性読者層のファンを集めた。また自身の旅行記を著した『中国おったまげ探訪記』『インド・ネパールぶったまげ放浪記』などアクティヴ派作家としての一面も持ち、抱腹絶倒で痛快な文体は学生諸君に夢と希望を与えた。詩人としては、銀色夏生をもじったペンネーム 金色なめを で純情恋愛ポエムを次々と発表。学内の話題を総なめにした。他、読書案内の『ろんどのやけっぱち書房』シリーズ、映画紹介の『寝巻きでシネマ館』シリーズなどがある。
第3期目には非公認サークルから大学公認クラブへと昇格させ、大学から予算がおりるようになるやいなや、連日連夜に渡って放蕩の限りを尽くした。
学生時代はインド、ネパール、インドネシア、中国、西欧諸国等海外放浪をライフワークとした。おかげで日本社会に馴染みきれないもどかしさがある。

現在はしがない会社員。一児の父。趣味は散歩と昼寝の他、特にない。座右の銘は『私が自画自賛しなければ一体誰がしてくれよう』である。

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