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旧イリアイ町界隈には『たまりみず』という名のサビ崩れたカフェがあります。そこでは、退屈に閉じ込められた他愛の無い、やっぱり退屈なお話がたっぷり詰まっています。そんなお話たちの一片をごらんになれる地球で唯一の場所。。

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破片のカタマリ 

妻子が実家へ帰っているため、久しぶりに静かな休日の朝を迎えた。

10時過ぎに目が覚めた。

体が重い。

昨日、少し飲みすぎてしまったようだった。

洗面台で顔を洗った。

それにしてもひどい顔だな。

無精髭をボリボリと掻いた。

歯ブラシをかけながら、玄関先の新聞を取りに行こうとした矢先、何かに躓いて足首をひねってしまった。

事故というのは予測不可能だから起こりうるもので、ボクの足首のダメージは大きい。

歯ブラシを銜えながら、悲鳴にも似た呻き声をあげた。

しかし、更に大きなダメージを受けてしまったのが、妻が大事にしていたマトリョーシカだった。

どうしてこんなところに?

と、思いつく間もなく、粉々に粉砕してしまったマトリョーシカを発見した妻の形相が脳裏をかすめた。

運の悪いことに、このマトリョーシカは陶器で出来ていたため、外側の人形も、内側の人形も、原型を留めないほどの壊れようである。

散らばった破片を拾い集めて、とにかく修復しなければ、明日には妻が帰ってくる。

面倒なことになってしまった。


引き出しからアロンアルファを取り出してきて、おぼろげな記憶を頼りに修復作業を始めた。

外側のひとつが完成すれば、あとはそれをモデルに組み立てればいい。

とは言ったものの、どうしたわけか出来上がったものはマトリョーシカではなく、これは恐らく、インドゾウかマンモスかナウマンゾウで、とりえずそんな類のもの、になってしまった。

面倒だからナウマンゾウとしておこう。

どこの部分をつなぎ合わせればゾウの鼻になってしまったのか?

さっぱりわからなかった。

途方に暮れて、ひとまずコーヒーを飲んだ。

いつもの場所にきちんと飾られているマトリョーシカが、ナウマンゾウと入れ替わっているだけだとしたら、その違いに妻は気づくだろうか。

間違いなく気づくだろう。

ボクはナウマンゾウを床に叩きつけて、再び粉々にした。


アロンアルファを使って、破片の組み立て作業を再開した。

瞬間接着剤の威力は確かなものだ。

これさえあれば、本物のナウマンゾウでさえ家の屋根に接着できてしまうだろう。

そうすれば、ナウマンゾウのいる家の主人として、一躍時の人になれるかもしれない。

と、いうような考えがいかに馬鹿げているかは、考えるまでも無いことだ。

そもそもが、ナウマンゾウなどもはやこの世にはいないじゃないか。


次に出来上がったものは、シーラカンスだった。

別にカツオでもマグロでもブリでもいいのだが、これはシーラカンスでなければならないような気分になったので、シーラカンスとした。

シーラカンスは尾びれに特徴がある。

製作時、そこのところは少しこだわってしまった。

幻の古代魚。

現在もなお、生息しているれっきとした魚だ。

シーラカンスを持ち上げ、満足げに宙を一周させてみた。

今にも泳ぎ出しそうな滑らかな尾びれだった。


だが、マトリョーシカではなかった。

ナウマンゾウより更に一歩遠ざかったような気がした。

今、ボクに必要なのはナウマンゾウでもシーラカンスでもなく、マトリョーシカに他ならないのだった。

未練がましくシーラカンスを抱きかかえ抱擁すると、再び床に叩きつけて粉砕した。

破片が小石のように一層細かくなった。

復旧作業はより困難なものになった。

困難というより、ほぼ不可能と判断してもいい。

河原の小石を組み合わせて色を塗れば、簡単にマトリョーシカが出来上がるくらいなら、誰だって苦労はしない。


細かくなった破片を拾い集めて、アロンアルファでつなぎ合わせてゆく作業をまた一から始めなければならなかった。

残念ながら、もはやマトリョーシカが出来上がるとも思えない。

チェストの上のいつもの場所に飾られたマトリョーシカを発見できない替わりに、妻が発見したまん丸いカタマリに対してボクはなんと答えたらいいだろうか。

三葉虫。

破片のカタマリを称して、ボクはそう答えようと考えている。
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2008/04/01 22:53|習作倉庫TB:0CM:0

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プロフィール

ろんど

Author:ろんど
高校時代に伝説のパンクバンド『Felicitous Dog』のメインボーカルとして活躍。ライブ活動多数。「今夜はオレのためにありがとう」などのMCで一躍脚光を浴び大スターの座に躍り出た。高校3年の学祭ではトリを務め、全校生徒を完全に魅了した。バンドは高校卒業時解散。
その後デュオ『Power of myth』のメインボーカルとして再び音楽活動に入る。神話的イメージとタンゴ調POPSの融合を試み新しい音楽の創造に尽力、友人、知人、他人、周辺住民の間で一世を風靡した。活動期間わずか4年で解散。
一方、大学在籍一年時に非公認サークル『創作文藝会』を有志4人らとともに創設。初代~3期の会長に就任。文芸同人誌 『ん!?』の編集長として創刊号から第9号まで手がける。
自身も小説、ポエム、エッセイ、旅行記など幅広く投稿し作家としての一面も合わせ持った。淡い青春時代の虚栄心を克明に描いた処女作『はげ』で衝撃のデビュー。『正常な狂人』『路地裏メルヘン倶楽部』『テープスペクタクル』『シルエット』『おやっさんの体験談』『山田X』『光芒の黒』『循環』など次々とヒット作を連発し、ファンタジックな世界観をやさしく流麗な文体で表現した悲喜劇が主に女性読者層のファンを集めた。また自身の旅行記を著した『中国おったまげ探訪記』『インド・ネパールぶったまげ放浪記』などアクティヴ派作家としての一面も持ち、抱腹絶倒で痛快な文体は学生諸君に夢と希望を与えた。詩人としては、銀色夏生をもじったペンネーム 金色なめを で純情恋愛ポエムを次々と発表。学内の話題を総なめにした。他、読書案内の『ろんどのやけっぱち書房』シリーズ、映画紹介の『寝巻きでシネマ館』シリーズなどがある。
第3期目には非公認サークルから大学公認クラブへと昇格させ、大学から予算がおりるようになるやいなや、連日連夜に渡って放蕩の限りを尽くした。
学生時代はインド、ネパール、インドネシア、中国、西欧諸国等海外放浪をライフワークとした。おかげで日本社会に馴染みきれないもどかしさがある。

現在はしがない会社員。一児の父。趣味は散歩と昼寝の他、特にない。座右の銘は『私が自画自賛しなければ一体誰がしてくれよう』である。

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