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旧イリアイ町界隈には『たまりみず』という名のサビ崩れたカフェがあります。そこでは、退屈に閉じ込められた他愛の無い、やっぱり退屈なお話がたっぷり詰まっています。そんなお話たちの一片をごらんになれる地球で唯一の場所。。

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遅筆にて 

ブログにトピを上げずに早、半年。

月日の流れるのは、雲のようにも、川のようにも早いわけで、ぼんやり生きてきて、ふと我に返ってみれば、このところまったく文章を書いていなかった。

自分のブログなのだから、言い訳くらい許されるだろうから、あえて書くが、ボクは恐ろしく遅筆のため、PCを前にすると、手足が氷結してしまい、小一時間程度、固まってしまう。

その恐怖感から、最近はPCにすら、近づかないよう、自室に篭りながらも細心の注意を払い、慎ましやかに生きてきた。


最近、十姉妹を飼っている。

仕事先で懇意にしている警備員氏と、昨今の不景気の話やら、野球の話やら、飼っているペットの話やらをしていると、ペットの話にやたらと食いついてきた。

「とにかく、十姉妹ってのは増えて増えてしょうがない。今度、もってきてやるよ」

その際、いつものように、煮え切らない生返事を、ついうっかり・・してしまったのだろうか?

左の耳から入れた警備員氏の話を、あっさり右の耳へと流してしまって、それっきり忘れていた。


ほどなく、出勤してみると、笑顔で警備員氏が、

「持って来たで」

と、言った。

反射的にボクは、

「何を?」

警備員氏は、怪訝な表情を浮かべつつ、

「つがいでな」

足元を見れば、大きな鳥かごがひとつ。

スズメよりもまだ小さな小鳥が二羽、申し訳なさそうに、止まり木に止まっていた。

「カゴも一緒にやるわ」

なんでも、わざわざつがいにするために、オスは隣にあるペットショップで飼ってきたのだとか。

丁寧に、小鳥の餌までダイソーで買い揃えてくれて、飼育に必要な一式を丸ごと戴く事になった。


一応、断っておくが、鳥の飼育に関して言えば、小学生の低学年以来経験が無く、かれこれ25年以上は、鳥を飼った試しがない。

実家には、家中を走り回る獰猛な猫が二匹もいたし、室内犬が更に二匹いた。

小鳥なんぞを、うっかり部屋で遊ばせようものなら、彼らの格好の遊び道具にされ、即死していただろう。

そんなわけで、低学年以降、小動物を飼ったことが無い。


ところで、ボクは電車通勤をしている。

職場は神戸の兵庫区にあり、阪急新開地駅を利用しており、三宮駅にも停車する。

スーツに身を包んだ良い大人が、十姉妹の入った鳥かごを持って、電車に揺られて帰宅する・・・とは。

いや、しかしどうにもならない。

警備員氏の笑顔は、実に純粋そのものだ。

悪意はまったくない。

わざわざ、オスを買ってきて、つがいにするような人物が、悪者であろうはずがない。

おまけに、小鳥の餌まで買ってきてくれる念の入れようだ。

彼は善人だ、善人に違いないのだ。


ボクは鳥かごを片手に、夕方5時過ぎに退勤した。

新開地の駅まで歩き、大きな鳥かごを抱えて改札を抜け、電車に乗った。

三宮で停車すると、案の定、どっと人がなだれ込んできた。

車内はあっという間に、いっぱいになった。

人いきれで蒸した車内で、

「チッ、チッ」

と、か細く十姉妹のメスが鳴いた。

二三人の乗客と目が合った。

十姉妹が電車に乗って、いったい何が悪いんだ?

外国へ行けば、牛や豚だって平気な顔をして車内で寝そべっているはずだ、と開き直った。


かれこれ三ヶ月。

十姉妹に見とれて、文筆がおぼつかなかったというわけだ。


ああ、もうこんな時間だ。

これだから、文章を書き出すと困る。

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2009/11/03 23:15|My だいありーTB:0CM:0

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プロフィール

ろんど

Author:ろんど
高校時代に伝説のパンクバンド『Felicitous Dog』のメインボーカルとして活躍。ライブ活動多数。「今夜はオレのためにありがとう」などのMCで一躍脚光を浴び大スターの座に躍り出た。高校3年の学祭ではトリを務め、全校生徒を完全に魅了した。バンドは高校卒業時解散。
その後デュオ『Power of myth』のメインボーカルとして再び音楽活動に入る。神話的イメージとタンゴ調POPSの融合を試み新しい音楽の創造に尽力、友人、知人、他人、周辺住民の間で一世を風靡した。活動期間わずか4年で解散。
一方、大学在籍一年時に非公認サークル『創作文藝会』を有志4人らとともに創設。初代~3期の会長に就任。文芸同人誌 『ん!?』の編集長として創刊号から第9号まで手がける。
自身も小説、ポエム、エッセイ、旅行記など幅広く投稿し作家としての一面も合わせ持った。淡い青春時代の虚栄心を克明に描いた処女作『はげ』で衝撃のデビュー。『正常な狂人』『路地裏メルヘン倶楽部』『テープスペクタクル』『シルエット』『おやっさんの体験談』『山田X』『光芒の黒』『循環』など次々とヒット作を連発し、ファンタジックな世界観をやさしく流麗な文体で表現した悲喜劇が主に女性読者層のファンを集めた。また自身の旅行記を著した『中国おったまげ探訪記』『インド・ネパールぶったまげ放浪記』などアクティヴ派作家としての一面も持ち、抱腹絶倒で痛快な文体は学生諸君に夢と希望を与えた。詩人としては、銀色夏生をもじったペンネーム 金色なめを で純情恋愛ポエムを次々と発表。学内の話題を総なめにした。他、読書案内の『ろんどのやけっぱち書房』シリーズ、映画紹介の『寝巻きでシネマ館』シリーズなどがある。
第3期目には非公認サークルから大学公認クラブへと昇格させ、大学から予算がおりるようになるやいなや、連日連夜に渡って放蕩の限りを尽くした。
学生時代はインド、ネパール、インドネシア、中国、西欧諸国等海外放浪をライフワークとした。おかげで日本社会に馴染みきれないもどかしさがある。

現在はしがない会社員。一児の父。趣味は散歩と昼寝の他、特にない。座右の銘は『私が自画自賛しなければ一体誰がしてくれよう』である。

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